僕はNASもネットワークもサーバも全然知識ないんですけど、それなりにNASを愛用してまして。
もう10年くらいは使ってます。
そんな僕が
- どんな理由でNASを使ってるのか
- NASを買って何がよかったのか
- どんなNASを買えばいいのか
- オレが買ったNASはどうだったのか
みたいなのを語ると、これからNASを使い始める人とかNASに興味がある人にとってはなんぼか役に立つのかなーと思ったので、今回買ったNASの選択基準や動機、レビューなどをしてみたいと思います。
NASがどういう物なのか超ザックリと
NASは「Network Attached Storage」の略ですが、
そんなものは覚えなくていいです。
読み方はたぶん「ナス」。
USBケーブルの代わりに、LANケーブルでつなぐ外付けハードディスクだと思ってください。
それならUSBの外付けハードディスクでええやんけ。
というのが、NASを布教していて最も食らう回数の多いカウンターです。
これに対する僕の回答をいくつか置いておきましょう。
RAID1をたぶん最もお手軽に導入出来るデバイス
RAIDというのは複数台のハードディスクを同時接続した場合にどう扱うか、みたいな奴です。
RAID1は2台のハードディスクに全く同じ内容を保存することで、どちらかが壊れてもデータを残せるモードです。
2台同時に壊れない限りはデータをロストしません。
故障率が0.1%なら1万分の1%まで確率を減らせます。
現状、このRAIDを最もお手軽に導入できるのがNASのはず。
一昔前?二昔前?はパソコンのマザーボードにほぼ標準でRAIDチップが載ってる時代もありましたが、今はなさそうなのでRAIDカード必須だと思います。
あとは、大事なデータ保存箇所はパソコン本体とは分離しておきたいので、そういう意味でもNASは優秀です。
ネットワーク内の端末全てからアクセスできる
これがNASの本来の用途だと思いますが、ネットワーク内のパソコン、スマホ、ゲーム機などから同じデータにアクセスして共有することができます。
家で使う場合だとデスクトップPCとノートPCでデータを共有したりとか、スマホの写真なんかをバックアップしたりとか、パソコンで保存した動画をPS4で見る、みたいな用途に使えます。
職場で使う場合はもっといろんな用途に使えるでしょう。
布教活動において興味持ってもらえるのはだいたい上の2つですね。
仕事で使ってる重要データなのにパソコン保存してるだけの人がけっこういるので、けっこう興味もってもらえます。
布教しても僕には1円もはいりませんが。
一家に1台NASを置け
とりあえずですね、何かしらデータを保存してる時点で「消えても全く困らないよ!」ってケースはないと思うんですよね。
ハードディスク1台だとそれが壊れたら終わり。 それがPCに入れてる場合だとPCが壊れても終わりになるケースがあります。
NASを買ったからってこれらの状況を100%回避できるわけじゃないのだけれども、NASを買って、ミラーリング(RAID1)するだけでその可能性をけっこう減らせるので一家に1台あってもいいもんじゃないかと思ってます。
特に、据え置きの外付けハードディスク(持ち運ばないやつ)を買うくらいなら
ちょっと予算増やしてNASを買いなさい。
一番安いのだと2万しません。
NASの選択基準
ズバリ、
NASを買って何がやりたいか。
だと思います。
RAID1でのお手軽データ保存なら、ハードディスク2台載せられるやつの中で一番安いのを買えばいいです。
それでもNASを名乗ってる以上はネットーワーク内でデータはシェア出来るし、メディアサーバの機能が付いてることも多いだろうし(ないのってあるのかな?)、その他いろいろな機能が勝手に付いてきます。
以下、ちょっと注意が必要そうなポイントを。
高速なLANは必要か?
NASの差別化ってハードディスク台数以外はけっこう分かりにくくて、各社上位機種になると「LANが高速です!」みたいなのを売りにしてるモデルがあるんですね。
今のネットワーク規格で最もスタンダードなのが「1GbE」というやつで、最大1Gbps=128Mbyte/秒で通信できます。 これの上位規格に「2.5GbE」や「10GbE」があって、速度はそれぞれ2.5倍と10倍。
NASも基本は「1GbE」。 上位機種だと2.5GbEや10GbEに対応していたり、オプションパーツで対応可能になったりというのがあります。
そりゃ速いに越したことはないのでなるべく高速なものを選べばいいんですが、実はコレ、けっこう面倒な仕組みになっていて。 パソコンのLANコネクタ、スイッチングハブ、LANケーブルなど、全てのネットワーク機器が高速な規格に対応している必要があります。
で、いざ高速なLANのNASを買うとなると、まず第一の問題点として、特に意識していなければ今あるデバイスのほぼ全てが速いLANに非対応という点。
つまり全部買い換えなきゃいけない。
第二に高速なLAN対応のものは値段がめちゃくちゃ高いです。
例えばPCのLANコネクタなんかは、今はもう「お金を払って買うものではない」という認識だと思いますが、10GbE対応のカードを増設するとなると安いものでも1万円くらいはします。
スイッチングハブはもっと高いです。
なので、
よく分かんないけどとりあえず速いのが欲しい。
と気軽に選択することができません。
自分の用途でほんとに10GbEが必要なのか、予算はいくらか、ハブなどの環境構築にいくらかかりそうか、などから見極めないといけません。
参考までに、フルHDの動画視聴で200~300Kbyte/秒くらいだったので、1GbEだとネットワーク内で同時に4端末でフルHD動画を見ることができます。 個人用途だと全く問題ないでしょう。
我が家は部分的に10GbEにしていますが、最も10GbEが活きたのはNAS購入時のデータを移す際で、以降はNASへのバックアップ、NASからのバックアップなど、それなりに速度が必要なケースはあるものの、全部自動でやっているので短時間でやるメリットがあまりないものばかりです。 全然10GbEを活かせてないと思います。
ハードディスク搭載モデルか?
あまりパソコンに詳しくない友人におすすめを聞かれて「ハードディスク2台で一番安いやつ」と言って、さっきも言いましたが、トラブったケースがありました。
Amazonの検索結果を見ると分かりやすいんですが、商品名に容量が書いてあるものと書いてないものがあるんですね。
ハードディスクがない方が当然安いので、それを買っちゃって、「安いの買ったらハードディスク入ってなかったぞ!」というわけです。
ざーっと見た感じ、BUFFALOやI-O DATAのものはハードディスクが搭載済み、QNAPやSynologyはハードディスクなしのようです。
ハードディスクなしモデルを買う場合は別途ハードディスクを買うのを忘れないように。
容量はどれくらい必要か?
まずは自分がNASに入れる予定のデータ容量を確認してください。 それから同系統のデータがどれくらいのペースで増えていくかをイメージして必要容量を考えてください。
この段階で10Tバイトを越えるようなら大用量のを買うしかありません。
そうでない場合。
いわゆる「コスパがいいもの」は簡単に計算できます。
例えば僕がよく使ってるWestern DigitalのNAS向けモデルだと、2021年5月現在、Amazonだと次のような価格設定です。
容量 | 値段 | GB単価 |
---|---|---|
2TB | 7,580 | 3.7 |
3TB | 10,735 | 3.5 |
4TB | 14,399 | 3.5 |
6TB | 15,599 | 2.5 |
「GB単価」というのがコスパの指標になるもので、「1Gbyteあたりいくらか?」という値です。
この4製品の場合は6TBがぶっちぎっていて、「値段自体は一番高いけど、容量で考えると一番お得だよ」という商品になります。
GB単価が最もいいものを買う予算がない場合は、予算内で最もGB単価がいいものか、容量の大きいものを選べばいいと思います。
もっと容量が欲しい場合。
単純に大きなハードディスクを買うという手もありますが、最上位クラスの容量になるとGB単価が跳ね上がります。
その場合はNAS自体を4台搭載モデルや6台搭載モデルにして、GB単価の良いハードディスクをたくさん積むという手もあります。
特に希望がない場合
まずは安いNASを買って使ってみて、自分がNASに何を求めているかを知るのがいいと思います。
1台使うと不満点が出てくると思うので、次はそれを満たすものを買えばいいだけです。
ライトな用途の場合は不満が出るケースも希だと思います。
僕が人に勧めているのはBUFFALOの2TBモデルとか。 これだと2万円しません。
もうちょっと容量が欲しい!とか性能がいいやつを!という場合は、大容量モデルにしたり、上位機種のLS520シリーズも選択肢にあるんですが、最初はとにかく低コストで選んでもいいんじゃないかなーと。
ちなみにGB単価はこんな↓感じ。
容量 | 値段 | GB単価 |
---|---|---|
2TB | 19,327 | 9.4 |
4TB | 24,913 | 6.1 |
6TB | 34,365 | 5.6 |
8TB | 45,800 | 5.6 |
12TB | 66,018 | 5.4 |
2TBモデルだけコスパがかなり悪いので、プラス5000円できるなら4TBを買った方がよさそうですね。
DS720+を選んだ理由
今回、急きょNASを新調することになったのは、以前使っていたQNAPのNASがまたもやランサムウェアの被害にあったからです。
データのバックアップは取っていたので損害自体は軽微でしたが、開発環境を壊されてそれを復元するのがチョーめんどくせーです。
というわけで、今回の要求条件は次のような感じに。
- QNAP以外のNASから選ぶ
- 開発環境のみ置く
- 今のNASよりCPUやメモリが高速なものが欲しい
- HDDをSSDにしたり、キャッシュを載せたりしてI/Oもなるべく高速化したい
- 出来れば10GbEに対応か拡張可能
第1候補:Synology DS1621+
Synologyのプラスシリーズでハードディスク6台搭載可能なDS1621+です。
なぜこいつが真っ先に挙がったのかというと、まず第一に、開発環境としてSynology NASに注目していたのがあります。 前に使っていたQNAPはMariaDBというソフトがバージョン5しか入れられずちょっと困っていたところ、Synologyなら複雑な操作なしでバージョン10がインストール可能とのこと。 他にも詳細は未確認ながら開発者向けの設計がされてるとかなんとか。 PHP、Node.jsなどの必要なバージョンがインストールできることは確認済みです。
第二に、Synologyは10GbE対応がかなり上位の機種でしか開放されていなくて、ミドルレンジまでだと拡張パーツでの対応も不可。 その中で最も安いのがDS1621+でした。
その他の機能としては、CPUが今大人気のRyzenに、メモリがDDR4対応。
M.2のSSDキャッシュが搭載可。
ハードディスクも6台詰めるので、開発環境用にSSDを2台載せて高速なボリュームと、ファイルサーバ用にハードディスク2台で大容量ボリューム、残り2台は使いながら足りない要素を補うために開けておこーかなと妄想が膨らんでいました。
ところがですね…。
本体だけで10万円!?
ここにメモリ増設、10GbEの拡張カード、SSDとか買ってくと20万を超えそうな勢いです。
それでも無理に予算をひねり出して買うかどうか最後まで悩んだのですが、Synologyが初だったのもあって、万が一僕の要求仕様を満たしていない部分が見つかった場合に上位機種を買ってしまっているとダメージがデカイです。
以上のような理由から断念しました。 お金あったら買ってました。
第2候補:TerraMaster F2-422
TerraMasterのハードディスク2台モデルF2-422です。
このメーカー知らなかったんですが、NASについて調べまくってたらタイムリーなことにHDD4台モデルのF4-422がおすすめ記事に出てきまして、詳細を調べてみるとかなり出来る子の様子。
何が凄いって、
お手頃価格なのにデフォで10GbE対応!?
でした。
F2-422は実売4万程度。 各社のミドル、上位機種と比較すると値段は同じかちょっと安いくらい。
にも関わらず、拡張カード(メーカー公式のはだいたい高い)の出費なしで10GbE対応というのはものすごいコスパだと思います。
たぶん10GbE対応NASの総額でぶっちぎり最安!
その他の性能としては、CPUとメモリは現環境と同じなので高速化にはならず、M.2 SSDキャッシュは不可。
PHPやMariaDB、Node.jsあたりもインストール可能っぽい。
(バージョンは不明)
挑戦的な価格が非常にそそる商品です。
第3候補:ASUSTOR AS6602T
ASUSグループのASUSTORのNAS、LOCKERSTOR2シリーズのAS6602Tです。
10GbEではないもののデフォルトで2.5GbE対応。
CPUは同じCeleronでグレードアップ、メモリはDDR4。 M.2 SSDキャッシュも可。
レビュー見てるとアプリがあまり充実してないとのことでしたが、PHPは7.3、MariaDBはバージョン10、Node.jsはバージョン10がインストール可能。
お値段は55,000円と、性能考えたらけっこういいですね。
総合的にかなりハイスペックだと思います。
ハード的にはASUSTORが今回の要件を一番満たしていますが、TerraMasterの10GbE最安値を狙う姿勢も応援したくなります。
さてここで我に返って、
10GbEってほんとに必要?
今回のNASはファイルサーバではなく開発環境として考えています。 そうなるとシーケンシャルの速度が要求されるケースはほとんどありません。
10GbEを諦めるとSynologyもHDD2台モデルが候補に挙がってきます。
第4候補:Synology DS720+
Synologyの2台モデル、DS720+です。
CPUやメモリはASUSTORのAS6602Tと同じ。 M.2のSSDキャッシュが詰めるのも同じ。
値段もAmazonで55,000円弱とほぼ同じ。
LANが1GbEなのだけがネックで、ハードスペック的にはASUSTORの下位互換とも言える性能です。
うーん、うーん。
かなり悩んだ末、
- ASUSTORは個人のレビューブログが少なく、実際の使用感がいまいち分からなかった
- Synologyは友人が使っていたので聞きたいことが全て事前に確認できた
- SynologyはPHPやNode.jsなど複数バージョンから選択できることを確認できた
- ASUSTORはNode.jsのバージョンが10で止まっていた
- ASUSTORはM.2スロットへの取り付けがちょっと面倒そうだった
と、安全志向でDS720+を選択しました。
よく考えたら今回は時間稼ぎ的な使い方だったので、もっと冒険してもよかったかなーと後悔してなくもないです。
DS720+の使用感
今回購入したのは、NAS本体がSynologyのDS720+(55,000円)。
メモリ増設用にSynologyの互換リストになかったCrucialの8GBメモリ(6,000円)。 Synologyの純正メモリを選ばなかったのは値段の問題(4GBで1万円ちょっと)もあるんですが、容量がもうちょっと欲しかったからです。
非公式メモリを使うと動かないこともあるし、サポートも受けられなくなるそうなので、自己責任でお願いします。
あとはSSDキャッシュ用に最初Western Digitalの1TB(15,000円)を買ったものの認識せず、純正400G(23,000円)を買い直しました。
ハードディスクはコロナ禍の半導体需要のせいか欲しいラインのものがなくて、無理矢理余らせたもの(WD Redの8TB)を使っています。
処理速度の向上
開発環境を新NASにあたり、以前のNASでの処理能力の低さに不満がありました。
ビルドにかかる時間が長すぎるんです。
それで今回はちょっとでも性能がいいものをと選んだわけでして、その結果はこう↓。
このグラフは、前に使っていたQNAPのNAS、TS-453Beと、今回購入したSynologyのDS720+とで、Nuxt.jsというフレームワークで作った6つのサイトのビルド/出力(generate)を行い、作業時間が何%減少したか、を表したグラフです。 横軸がサイト名で、カッコ内は出力ページ数(616Pなら616ページ)。 縦軸は減少した量(%)です。 減少量なので、数値が大きいほど高スコア。
結果、ビルド時間は40~50%減、出力時間は50~60%減。
非常に満足のいく結果でした。
お断りしておくと、これはQNAPだから遅いってわけじゃなくて、単純に時間経過によるハードウェアの進歩の影響が大きいと思います。
SSDキャッシュの効果は不満
前回の実験では「SSDキャッシュはほぼ効果なし」という結果になりました。
(計測の仕方に問題があるのかもしれないです)
Nuxt.jsのビルド時間だけはちょろっと効果あるかなーという感じ。
動かなかったWDのSSDと合わせて8万円近く出してるので、これで内臓SSDにすればよかったなーとちょっと後悔。
開発環境構築に関して
QNAPとはちょっと勝手が違いましたが、無事にWordPressの導入もNuxt.jsの導入も無事に終えました。
上で書いたように処理速度が上がっているので非常に快適です。
メディアサーバの使い勝手
地味ながら使い勝手が向上しました。
我が家は家の中にDLNA(メディアサーバ)の端末(PS3やPS4)が3台あってですね、動画見たり写真見たりすることがあるんですが、今回購入したDS720+では、PS4のメディアプレーヤーから機種を選択後、「動画」「写真」などを選択するだけで登録したフォルダを開いてくれます(1段階)。
それに対してNETGEARのREADYNASは2段階。
- Browse Folders
- 動画
QNAPは3段階。
- Videos
- Folder
- Video
たいした手間ではないとは言え、イラッとすることもあったので、地味に快適になりました。
まとめ
NAS更新にあたり、ASUSTORのAS6602TとSynologyのDS720+を迷った結果、DS720+を買いました。
同価格帯あたりではASUSTORの方が高スペック。 ソフトウェア的な部分で、ASUSTORで確認の取れなかった部分、Synologyでは確認が取れた部分で最終的にはSynologyを選択しました。
結果は大満足です。
ただ、1GbEより速い環境を望んだ場合、Synologyはめちゃくちゃコストがあがるので、これからの各社の競走に期待したいです。
ハードディスク2台…
できれば4台までで10GbEで処理能力の高いやつならお金は出します。